第13回哲学カフェ活動報告 テーマ:「働く」とは?
○日時:2021年11月20日(土)13:00~14:30
○場所:「Cafe伊太利庵堺東店」
○参加者
淡野(40代男性)
Tさん(30代男性)
ウルフさん(50代男性)
○テーマ:「働く」とは?
●「働く」を巡る議論
・哲学においては、「働く」ということについて、色々な切り口があるのですが、皆さんが扱いたいテーマはどういったものでしょうか。
・私は「働く」ことと健康の関係なんかを扱ってみたいです。
・私は金儲けのためだけに働くのは嫌だけれども、社会貢献のために働くのは楽しいと感じる。ここら辺の違いについて話しあってみるのはどうですか。
●「働く」ことの類型
・まずは、「働く」の類型について話してみましょう。ハンナ・アレントによれば、生存のための「労働」、社会のために有形のものを作り出す「仕事」、社会のために無形の様々な行為を行う「活動」という三類型に人間の行動は分けられるそうです。
・先ほどの話に当てはめるなら、金儲けのために「働く」のが「労働」、社会貢献のために「働く」のは「仕事」か「活動」になるでしょう。
・実際に我々が「働く」ことを考えた場合、そんなに綺麗に分けられないと思います。
・勿論、これらは理念型ですので、一つの「働く」ことが、同時に「労働」の側面と「仕事」や「活動」の側面を持っているということはあり得ます。とは言え、普通に我々が平日に「働く」時は「労働」の側面が大きいでしょうが。
・その意味で、私は「余暇」というものが重要になってくるのではないかと思います。
●「余暇」と「不足」
・確かに、「労働」があるからこそ、「余暇」の価値が高まることになります。人間は何事も相対的な評価でしか物事を感じることができません。完全な経済的余裕があって、何の不安も不満もなければ、人間は何もしようとしなくなるでしょう。
・それはどうでしょうか。例えば、古代ギリシアでは、労働は奴隷が担い、自由民は労働から解放されて常に「余暇」の状態だったにも関わらず、哲学に励んでいたのではないでしょうか。純粋な好奇心を動機に真理を追究するのは、不安や不満とは無関係だと私は考えます。
・私の考えでは、そのような純粋な好奇心ですら、何らかの不安や不満が根底にあるということです。生き物は自分の生存に脅威を感じたり、有利に働いたりするからこそ好奇心のような感情を発達させたと考えています。
・つまりは、何らかの不均衡があるからこそ、作用や反作用が生まれるのであり、完全な均衡が達成された平衡状態では何も起こらなくなると言うことですね。
●「欲望」と「快楽」
・では、その不均衡とは具体的になんでしょうか。
・私は、何らかの「快楽」を得たいという人間の「欲望」だと考えています。勿論、「快楽」や「欲望」にも色々と種類があります。例えば、美味しいものを食べたいという「欲望」と何かを食べて「美味しい」と感じる「快楽」は誰でも分かりますが、困っている人を助けたいという「欲望」や困っている人が楽になって笑顔になるのを見て嬉しいと感じる「快楽」は分からない人も居るでしょう。
・その「欲望」や「快楽」の違いは何が原因でしょうか。
・生まれつきの素質と育ってきた環境の両方の組み合わせだと私は考えています。そして、これらの「欲望」や「快楽」にも方向性みたいなものがあって、どんどん広がって発散してしまうものと、徐々に狭まって収束していくものがあるように感じています。
・その「欲望」と「快楽」の方向性、「発散」か「収束」か、というのは面白い考え方です。個人的には、アリストテレスが言う「中庸の徳」というのは、そういう「欲望」や「快楽」を「収束」へ方向づけようとする修練みたいなものではないかと感じます。
●「自己所有権」と「共同体」
・そういった「欲望」や「快楽」の方向性、「発散」と「収束」というのは、個人だけの問題ではなく、集団の問題でもあると思います。あらゆる人が「発散」の方向へ向かってしまえば、秩序も共同体も維持できないのではないでしょうか。
・個人と個人が公平な関係性の下で、自分の意志で合意したならば、基本的にはどのような「欲望」や「快楽」であっても自由に認められるべきだという立場です。勿論、これはあくまでも原理・原則であって、現実には能力や社会的地位等の格差があり、合意を強制するという事態がありえるので、規制等も必要になる訳です。
・自分の身体や能力は、自分の判断で好きに使用して良いという「自己所有権」の原理は尊重しますが、「物の取引」と、人間の労働や能力といった「人的資本の取引」は区別して慎重に取り扱うべきだというのが私の立場です。ポランニーが言うように、「物の取引」は「市場」での「交換」をしても問題ないが、「人的資本の取引」は「共同体」での「互酬」や「再配分」に留めるべきだと私は考えます。
・どちらの言い分ももっともな面があると感じるが、私にはどちらが正しいとも決めかねる。月並みな言い方になるが、自由と秩序、個人と共同体の程よいバランスを考える必要がある。
○今後の方針
・次回開催予定:1月15日(土)13:00~14:00
・次回テーマ:「幸せ」とは?
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