第11回哲学カフェ活動報告 テーマ:「可能世界」とは?
○日時:2021年9月25日(土)13:00~14:00
○場所:オンライン開催
○参加者
淡野(40代男性)
Mさん(20代男性)
ウルフさん(50代男性)
○テーマ:「可能世界」とは?
●「可能世界」を巡る議論
・哲学においては、「~は必然である」、「~は可能である」、「~は偶然である」等の推論や反実仮想を巡る議論が繰り返し行われ、それらの議論は伝統的に「様相」(Modality)と呼ばれてきた。
・西洋哲学において、様々な可能性が無数にあること、この現実世界と他の可能な世界との関係等について議論を始めたのはライプニッツとされる。ちなみに、ライプニッツによれば、神の心の内には無数の可能世界が存在するが、実現しているのは最善の世界である現実世界のみということになる。
・この「可能世界」や「様相」を巡り議論が活発化したのは、デイビッド・ルイスが無数の可能世界が物理的に実在することを前提とする「様相実在論」を主張して以降である。
●「可能世界」という概念について
・私は「可能世界」という概念そのものに疑念を感じているし、これらの議論そのものに余り意味を感じない。そもそも、ある事象や結果について、現代の科学が「必然」か「偶然」か等を決定できると思えない。
・私は「可能世界」という概念は非常に面白いと考えている。現実とは異なる可能性について色々と想像することはそれだけで楽しい。また、自分の日常を振り返っても、偶々上手くいっただけで、失敗することがあり得たようなこと、逆に、運悪く失敗したが、成功していたかもしれないこと等の経験は普通にあると思う。
・私は「可能世界」を想定することで、性質や存在といった伝統的な哲学の概念等に別の解釈が可能となることや、世界とか現実とかをどう考えるかという議論の前提が広がることそのものが楽しいと感じる。
●「様相論理」と「可能世界」
・「様相論理」は「述語論理」を拡張した論理学である。述語論理における全称量化子(「全てのxについて」)と存在量化子(あるxについて)が否定(~でない)で互いを規定しあうように、様相論理における必然性演算子(~は必然である)と可能性演算子(~は可能である)が否定で互いを規定する。「可能世界」は、この「様相論理」と「述語論理」の論理構造の類似から、必然性演算子を「すべての可能世界について」、偶然性演算子を「ある可能世界について」と解釈しようとする試みであると言えると思う。
・そのような発想や議論が学問として無意味とまでは言わないが、話が抽象的過ぎて、正直に言ってついていけないし、興味も湧かない。申し訳ないが、私にはただの「為にする議論」にしか思えない。
・私はこういった発想や議論も面白いと思うが、マニアックなテーマという指摘はその通りとも思う。個人的には、これらの議論と量子力学や宇宙論との関係が気になる。
●「可能世界」と物理学
・「可能世界」を巡る哲学の議論は、「様相論理」を中心に展開されており、その物理的実在の是非も議論はされているが、一応は、量子力学や宇宙論とは別の議論だと思われる。
・例えば、「様相実在論」では、ある可能世界と他の可能世界は「如何なる物理的因果関係もない」ことを前提としている。それに対して、量子力学では、光子の二重スリット実験に代表されるように、複数の可能性が波動関数として、物理的に干渉することが定説になっている。宇宙論におけるマルチバース理論でも、現実に無数の小宇宙が存在するとされるが、小宇宙同士はブラックホールやホワイトホールのような特異点を通じて繋がっていると主張している。
・その「物理的因果関係がない」という条件はそれほど重要だとは思えない。私からすると、「異なる可能性に基づく複数の世界」という発想は同じであるし、そのような発想を求める欲望も同じものだと感じるからだ。
●「可能世界」の基盤となる欲望
・ご存じかどうかは分からないが、主人公が異世界に転移したり転生したりして、大活躍するというサブカルチャーのジャンルがある。私からすると、「可能世界」という発想やその根底にある欲望は、「現実とは違う自分や世界への希求」だと考える。
・恐らく、「なろう系」と呼ばれるジャンルを想定した話だと思われるが、そのような「現実とは違う自分や世界への希求」という欲望が「可能世界」という発想や議論に関係していることそのものには同意する。しかし、「様相実在論」や「量子力学の多世界解釈」等の議論が、それらのジャンルで揶揄される「後悔や逃避」といった欲望に還元されるだけのものというのは乱暴に過ぎると思う。
・私はそのようなジャンルは読んだことはないが、例えば、SFやファンタジーに代表される「もしもの世界」への興味や憧れは、ポジティブな欲望も含まれていると考える。
●雑談
・今日の「可能世界」というテーマは抽象的かつ専門的過ぎたように感じる。
・専門用語や専門家の意見の引用が多すぎて、理解しづらい部分もあった。もっと自分の経験や考えを中心に議論した方が良いように思う。
・テーマ設定や運営方法については、今回の事例を反省し、今後の改善につなげていきたい。
○今後の方針
・次回開催予定:10月16日(土)13:00~14:00
緊急事態宣言が解除されれば、堺東駅で開催。継続であれば、オンライン開催。
次回テーマ:「食べる」とは?
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