第10回哲学カフェ活動報告 テーマ:「テセウスの船」とは?

○日時:2021年8月21日(土)13:00~14:00

○場所:オンライン開催

○参加者
淡野(40代男性)

Mさん(20代男性)

Tさん(30代男性)

ウルフさん(50代男性)

○テーマ:「テセウスの船」とは?

●「同一性」を巡る議論

・哲学では「同一性」、即ち、「AとBは同じ」という時の「同じ」にも色々な種類があると考えてきた。例えば、「私と彼は『同じ車』に乗っている」という時のことを考えてみる。この「同じ車」が、物理的に同一の時間や空間を占めるという意味で「同じ」という場合、このような「同じ」を「数的同一性」と呼ぶ。

・また、この「同じ車」が、レクサスやカローラといった「同じ車種」という意味で「同じ」という場合、このような「同じ」を「質的同一性」、あるいは「類的同一性」と呼ぶ。

・さらに、例えば、ある時に買ってきたバナナが、時点Aではまだ青く、時点Bでは黄色になり、時点Cでは黒くなっても「同じバナナ」であるというような、変化をしているにも関わらず「同じ」という場合、このような「同じ」を「通時的同一性」と呼ぶ。

●「テセウスの船」の二つの問い

・「テセウスの船」とは、古代アテネ王国の王子テセウスが、毎年生贄を要求していたクレタ島の牛頭人身の怪物ミノタウルスを退治して凱旋したことを記念して、アテネの港にその船を展示したというギリシア神話に由来する。

・第一の問いは、この「テセウスの船」を展示していると、あちこちが老朽化したり、事故で損傷したりした結果、随時に部品を取り換えて修理し続けた。ついには、全ての部品が取り換えられたが、その全てが取り換えられた後の船と、元の船は「同じ」なのか否か。

・第二の問いは、展示されていた「テセウスの船」の老朽化したり、損傷したりした部品は、廃棄せずにとある倉庫に保管されていたとする。そして、第一の問いにあるように、元の船の部品が全て取り換えられた後、保管されていた部品を組み上げた場合、この組み上げた船と、元の船は「同じ」なのか否か。

●「テセウスの船」の第一の問い

・元の船をA、部品を全て取り換えた後の船をBとした場合、このAとBは「同じ」と言えるかどうか。

・私はAとBは「同じ」と考える。物であれ、人間であれ、変化や構成部分の交換によって「違う」ものになると考えると、無駄に混乱する。ある種の機能や目的という観点から、その対象が継続していると見なせるなら、「同じ」と見なして良い。

・私は二つの意味で、AとBは「違う」と考える。第一に、部品を交換しなくても、経年劣化による変化が起こった時点で、AとBは「同じ」ではない。第二に、Aは実際に航行するという目的や機能を果たしていたが、Bはミノタウルス退治を記念する展示という目的や機能を果たしているという意味でも「同じ」ではない。

・私はここで議論されている「同じ」の定義や概念そのものに疑いがある。何を「同じ」と見なすかどうかを、特権的に定義したり、決定したりすることそのものが誰に可能なのかと言う疑念があるからだ。

●「テセウスの船」の第二の問い

・次に、元の船をA、倉庫に保管されていた部品で組み上げた船をCとした場合、このAとCは「同じ」と言えるかどうか。

・私はAとCは「違う」と考える。第一の問いと同様に、ある種の機能や目的という観点から、Cは航行にも展示にも適さないので、Aとは別物と言うべき。

・私もAとCは「違う」と考える。第一の問いと同様に、Cは既に様々な物理的変化を被っているし、無用物と見なされるという意味でも「同じ」とは言えない。

・私はAとCは同じと言って良いと考える。それどころか、Aを起源とするという意味で、BもCもAと「同じ」と言って良いとするのが私の考え方だ。

●同一性の根拠としての内在性と関係性

・「同じ」の根拠となる考え方を整理すると、対象の構成部分や性質といった「内在性」と対象の機能や目的といった「関係性」の二つに大きく分けられる。では、これらの根拠についてどう考えるか。

・私は「関係性」のみを根拠とすれば良いと考える。機能や目的が果たせればそれで良いかと。

・私は「内在性」と「関係性」の両方を根拠とすべきと考える。「同じ」かどうかは、対象の性質や構成部分も、機能や目的も、両方を考慮した上で判断すべきだからだ。

・私はそもそも「同じ」の根拠がどうとか難しく考えることがそもそもの間違いだと考える。「同じ」の根拠が何か等に拘り過ぎると、思考が硬直したり、他者を排斥したりする原因になりかねないと考えるからだ。

●雑談

・新規参加者の開拓のために、哲学をテーマにしたビブリオバトルを開催してみようかと企画している。

・固定したテーマでビブリオバトルをやっても人が集まらない。まして、哲学のような難しいものをテーマにしても、新規開拓は見込めないだろう。

・テーマを設けずにビブリオバトルを開催し、そこで哲学入門書をプレゼンする位の方向性が無難。

○今後の方針

・次回開催予定:9月25日(土)13:00~14:00

緊急事態宣言が解除されれば、堺東駅で開催。継続であれば、オンライン開催。

・ビブリオバトル開催については、引き続き検討を続ける。

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